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庄内のお雛様


平成24年3月、休暇村羽黒が庄内のお雛様を巡るツアーを企画しました。
そのツアーに参加し、更にその前後も利用して酒田と鶴岡の豪商のお雛様を満喫してきました。
この時期鶴岡では「鶴岡雛物語」、酒田では「酒田雛街道」と銘打ってイベントが開かれ、
各施設や商店などで秘蔵のお雛様が公開されます。
初めての街、これらのパンフレットを片手にお雛様を訪ね歩いて来ました。




見て歩いた順にご紹介します。


三井家蔵座敷のお雛様

鶴岡市本町1丁目
平成24年(2012)3月29日

東海道と上越の新幹線、奥羽本線を乗り継いで雪の残る山形県鶴岡へやって来ました。
初めに訪れたのが市の有形文化財に指定されている旧家、三井家の蔵座敷。

三井家の蔵座敷

蔵座敷は繁華街のアーケードに面しており、
隣の茶寮で入場券付の雛御膳を頂いてから、
お雛様の飾られている蔵座敷の二階へ案内して頂きました。


雛の名工原舟月作のお雛様

幅二間の床の間にしつらえられた雛段には名工の雛人形が並んでいます。
その一つは原舟月作の古今雛。(江戸末期/江戸製)
内裏雛の両脇に太刀持ちが控え、珍しい女楽士による雅楽七人囃子が並んでいます。


雛形のお座敷

雛道具の中にあった模型・雛形(ミニチュア)のお座敷。
床の間、掛け軸、障子、火鉢からヤカン、湯飲みまで精巧に作られています。


雛形のお台所

こちらはお台所。かまどから薪まで揃っています。

雛形の瀬戸物屋さん

瀬戸物屋さんの店先。
大皿や茶壷、お重、徳利、丼にすり鉢、便器まで並んでいるのでびっくりしました。




旧風間家丙申堂のお雛様

鶴岡市馬場町
平成24年(2012)3月29日
30日にもツアーで

風間家は庄内藩の御用商人で幕末には鶴岡第一の豪商となりました。
庄内地方では酒田の本間家に次ぐ大地主です。
建物は明治の丙申の歳に建てられたのでこの名前が付いたとかで、
古く由緒あるお雛様やお雛様研究家のコレクション、つるし飾りが展示されています。


旧風間家丙申堂

国指定の重要文化財。屋敷は約800坪、19室180畳、木造杉皮葺き石置屋根。
4万個の石が乗り20年に一度葺き替えが行われるそうです。


二代目永徳斎作の古今雛

風間家九代目の姉が残した二代目永徳斎作の古今雛。
(風間家のお雛様は本間美術館本館に飾られています)


分家風間家のお雛様

分家風間家のお雛様

三浦家のお雛様

三浦家のお雛様。

お雛様研究家のコレクション

お雛さま研究家のコレクション。

お座敷でゆっくり眺める

豪商のお座敷いっぱいに飾られたお雛様たちをゆっくりと眺めることができました。




山居倉庫のお雛様

酒田市山居町1丁目
平成24年(2012)3月30日
ツアー

酒田のランドマークと言えばこの倉庫。
明治の半ばに建てられた米の倉庫で、12棟あります。
その1棟が資料館、2棟が観光物産館となっていて残りは現在も使われています。
その観光物産館が「酒田夢の倶楽」でミュージアムが「華の館」です。

ケヤキ並木と山居倉庫

ケヤキ並木が山居倉庫の日除け風除けとなっています。

旧加藤家の享保雛

「華の館」に飾られた旧加藤家に伝わる古今雛(江戸後期/江戸製)。
上段には古今雛と百歳雛が、
中段には雅楽五人囃子が、下段には胡蝶の舞が飾られています。


祭りに使われた亀笠鉾

本間家が山王祭のために宝暦12年(1762)京都の人形師に作らせ
北前舟で運んできた亀傘鉾。これが酒田の傘福の原型だとも言われています。





本間家旧本邸お雛様

酒田市二番町
平成24年(2012)3月30日
ツアー

「本間様には及びはせぬがせめてなりたや殿様に」と謡われた酒田一の豪商本間家。
三代光丘が幕府巡見使のために建てさせ藩主に献上、以後拝領した屋敷がこれです。
武家屋敷と商家造りが一体となった珍しい建築様式と言われています。
お雛様の期間中には京や江戸から北前舟で運ばれた古今雛や百歳雛など多数が展示されています。

玄関には樹齢400年の赤松

二千石の格式の武家屋敷、玄関には樹齢400年の赤松

豪華なお雛様や相生様。

幅1.5間の雛段にお雛様・相生様(百歳雛)など。
いずれも江戸時代に京都から北前舟で運ばれてきたもの。
供えられているお菓子は「お雛菓子」や「庄内押し絵菓子」です。

芥子雛まど。

象牙の芥子雛やミニチュアの玩具やお菓子なども飾られていました。




山王くらぶのお雛様

酒田市日吉町2丁目
平成24年(2012)3月30日
ツアー

「山王くらぶ」は港都酒田を代表する元料亭で、
現在は料亭文化や酒田の歴史を紹介する施設になっています。
一階では北前舟が運んだ富と酒田商人の歴史や文化が紹介され、
二階では日本三大つるし飾りのひとつ「酒田傘福」が多数が展示されています。
今回の旅ではこれが見たかったのです。

山王くらぶ

山王くらぶの外観、窓を見ただけで凝った作りであることが窺えます。

「日本三大さげもん」が一堂に

酒田の「傘福」は、伊豆稲取の「ひなのつるし飾り」、
九州柳川の「さげもん」と並び「日本三大さげもん」と言われ、
これらが一堂に集められていました。


大小さまざまな傘福

大小さまざまな傘福。
傘福は本来子供の成長などを願い、傘の先に願いを込めた飾り物を下げて、
寺社に奉納するものだったそうです。


大きな傘福

高さ2.7m、傘の直径2m、飾りの数は999個もあります。

辻村寿三郎の人形

人形師・辻村寿三郎が企画・制作した「さかたの雛あそび」




相馬樓のお雛様

酒田市日吉町1丁目舞妓坂
平成24年(2012)3月30日
ツアー

老舗料亭相馬屋を舞妓茶屋・雛蔵畫廊としてリニューアルした観光施設です。
市松模様の畳までが紅花で染め上げられた大広間で、
紅殻の床の間を背景に舞う舞妓さんは幻想的。ここでお食事も頂きました。
 酒田の遊里文化を今に伝えつつ、雛蔵畫廊」の異名通り雛人形を常設展示し、
特にお雛様の時期には、楼内の随所にいつも以上の雛飾りが行われ、
いっそうの華やぎを見せると言われます。

あでやかな相馬樓の外観

あでやかな相馬樓の外観。

次郎左衛門雛と享保雛

次郎左衛門雛(左)(江戸時代/江戸製)と享保雛(右)(江戸時代/京都製)

享保雛

享保雛。

原舟月作の古今雛

名工・原舟月作の古今雛(江戸末期/江戸製)。

舞妓さんとの記念写真

演舞鑑賞のあと相馬樓酒田舞妓との記念写真。

舞姫弁当

お雛様の時期の舞姫弁当




致道博物館のお雛様

鶴岡市家中新町
平成24年(2012)3月30日
ツアー

鶴岡は庄内藩酒井家十七万石の城下町で、
致道博物館は旧鶴岡城三の丸にあり御隠殿(藩主御殿と隠居所)と
名称指定の酒井氏庭園のほか、移築された郡役所、警察署、古民家等からなります。
お雛様に時期には御隠殿で旧藩主酒井家のお雛様とお雛道具が公開されています

お雛様が展示されている御隠殿

藩主の隠居所として建てられた御隠殿に
藩主ゆかりの大名雛やお道具が展示されています。


享保雛

享保雛。

古今雛

古今雛。

古今雛

古今雛(江戸後期/江戸製)。

有職雛と稚児雛

酒井家の有職雛と稚児雛(上段左)(どちらも江戸後期/京都製)。

芥子雛

酒井家の芥子雛の雛段飾り。(江戸後期/江戸製)




本間美術館のお雛様

酒田市御成町
平成24年(2012)3月31日

庄内藩主が酒田巡検に来る際の別邸として本間家が建てた屋敷「清遠閣」と
庭園「鶴舞園」を、戦後美術館として開放したもの。
「雛祭古典人形展」は、敗戦直後の昭和23年から続けられており、
古典人形コレクションが一同に展示されています。

お屋敷から庭園越しに見た新館美術館

この日は雨が激しく思うように写真が撮れませんでした。
お屋敷(本館)の二階から庭園越しに新館美術館の建物を見たものです。
本館一階の表座敷には鶴岡の風間家から寄贈されたお雛様が飾られていました。


古いお雛様

新館には蒐集家が集めたというお雛様と人形が200体近く展示され、
古いものは正保(1645年頃)、慶安(1650年頃)といったものがあります。
時代や京・江戸による違いなどが分かるようになっています。
この他御所人形や衣装人形といわれるものも多く展示されていました。
(撮影が禁止されていましたが・・・)





酒田あいおい工藤美術館のお雛様

酒田市相生町1丁目
平成24年(2012)3月31日

殿様や豪商のお屋敷などを見た後、この美術館に来ておやっと驚いた。
建物は古い民家、引き戸を開けて中に入ると、雑然とした展示品に埋まって主人が座っていた。
話を伺うと元校長先生で質屋だった古民家を買い取り、
自身が蒐集したお雛様などを展示しているとか。

あいおい工藤美術館

入口の張り紙に「古典びな、酒田古傘福、だんかざり10くみ、大きい人形」
開館中の札は下がっていても引き戸を開けるのには勇気が要りました。


古享保雛

古享保大型雛、木彫りで表情豊かな大きな親王様。(江戸中期)

「打敷」による段飾り

「打敷」による段飾り。小袖や内掛を飾りものに仕立てたもの。
人形は京都の人形師・桃柳軒玉山の作。(明治時代)


原舟月作の古今雛

個性的な顔立ち、江戸の名工舟月の作。(江戸後期)

酒田亀傘鉾

酒田亀傘鉾(天保五年製作)。

館長の工藤幸治氏

館長の工藤幸治氏は、酒田聾学校(現特別支援学校)の校長などを務められ、
現在は酒田市芸術文化協会会長をされているそうです。
いろいろと詳しいお話を聞かせて頂きました。





旧鐙屋のお雛様

酒田市中町1丁目
平成24年(2012)3月31日

鐙(あぶみ)屋は酒田を代表する廻船問屋で、江戸時代を通じて繁栄しました。
日本海海運に大きな役割を果たした姿を、今に伝えています。
その繁栄ぶりは、井原西鶴の「日本永代蔵」にも紹介されたほどです。
屋敷は石置杉皮葺屋根の典型的な町家造りで、
 内部は通り庭(土間)に面して、十間余りの座敷、板の間が並んでいます。
昭和59年に国の史跡指定を受けました。

国指定史跡旧鐙屋

国指定史跡旧鐙屋の玄関

帳場や台所には人形を置いてその様子を再現

帳場や台所には人形を置いてその様子を再現しています。

酒田の鵜渡川原や京の伏見人形などの土雛たち

雛まつりの時期には酒田の鵜渡川原や京の伏見人形など
多くの土人形が展示されています。(上の方が雛人形)


古い土人形

古そうな土人形が飾られていました。

火鉢にあたる

寒かったので手あぶりに火鉢を進めてくれました。
懐かしい暖かさでした。



酒田の豪商やお殿様が、財に物を言わせて江戸や京から取り寄せたお雛様は
今まで見てきたどの町のお雛様より立派でした。
傘福も念願が叶ってじっくりと見ることが出来ました。
今回の旅は大満足で、何度でも訪れたいと思いました。
いつまでも旅の余韻が残っています。


平成26年5月