飯田街道ウォーク その5
平成18年9月27日(水) <その1>
先回の飯田街道ウォークは6月20日だった。あれから早くも三ヶ月が経ったことになる。この間、自分自身の大きな出来事としてはハンガリー・オーストリア12日間の旅があり、社会の出来事としては小泉内閣から安倍内閣へと変わった。暑かった夏が去り、お彼岸も済んで季節は秋へと変わっている。
今回は伊勢神峠の上りからスタートして武節、今の稲武をゴールとする区間に挑戦する。気候が良くなっただけに、その分日脚が短くなった。交通の便の良くない所だけに、絶えず時間を意識して、帰りの便に乗り遅れることの無いように気を付けねばならない。
何時ものように家内に駅まで送って貰って街道歩きに出発。JR東海道本線、名鉄で東岡崎へ。9時10分発の名鉄バスに乗り換えて香嵐渓まで。更に10時57分の稲武バスに乗り継ぎ11時24分伊勢神着。爽やかなお天気だ。
前回は途中で空腹との戦いがあったので、今回はその反省として、バスの乗り継ぎの余裕時間にお蕎麦を食べ、おにぎりをザックに入れて万全の態勢をとることにした。
伊勢神峠の上り下り
「伊勢神バス停から国道トンネルを望む」
香嵐渓から乗車した稲武バス、乗客はお年を召したご婦人ばかり。ほとんどの人が峠までの集落で降りたので、峠まで乗って来たのは二、三人、その中の一人がここで降りる。何だか申し訳が無いみたい。
バス停のところにはドライブインと大きな駐車場、トイレなどがある。この先の国道の伊勢神トンネルの手前で旧道は右に曲がる。先回は峠の上から引き返したので、ここから峠までの区間は重複して歩くことになる。
「伊勢神峠の登り口」
坂を登り旧道が明治に出来た旧伊勢神トンネルに入る手前で左に外れ、本当の、昔の峠道を辿る。
「野の花」
峠道は気持ちの良い杉木立の中を行く。その道の両側にはいろいろな花が咲いている。今の季節にこんなに花が咲くのかとびっくりするくらい。でも残念ながら野の花の知識が無いのでその一つ一つの名前を言い当てることが出来ない。分かったのはミズヒキソウくらい。
「峠直下の標識」
今朝までの雨で、足元が濡れていたが歩くのには支障無く、順調に登ってきた。ここまで来たら峠まではあと僅か。ここが東海自然歩道恵那コースとの合流点。右に行くと伊勢神宮遥拝所から東海自然歩道本線へと道が延びる。伊勢神宮遥拝所では先回何枚かの写真を撮っているので、今回は立ち寄らずに先を急ぐことにする。
「伊勢神峠」
峠へ来た。先回は道不案内と帰りのバスの心配から、ここまでで断念して引き返した。今回は調べも付いているし、自信を持って先へと進むことが出来る。
「峠の石仏」
大きな大乗妙典碑と三体の馬頭観音、その向こうに八百比丘尼の杉と観音さまがある。碑のところに木漏れ日が射していたのが印象的だった。
「杉木立の中の九十九折れ」
下りは杉木立の中を九十九折れで下って行く。リズミカルに、快適に下って行く。
「珍しい植物の看板」
下る途中に、このあたりで見られる珍しい植物の解説板が幾つか立っている。写真を使った丁寧なもので、『コアジサイ』『マムシグサ』『フタリシズカ』『ギンリョウソウ』などがあった。
「峠東登り口の標識」
峠を降りた。この標識を左に行くと東海自然歩道恵那コースで旭高原、矢作ダム、恵那へと続く。右に行くとあと100mで旧伊勢神トンネル東口に至る。
「旧伊勢神トンネル東口」
旧伊勢神トンネルの東口に着いた。伊勢神のバス停からここまでおよそ30分で、予想していたよりは小さな峠越えであった。トンネルの向こうに小さく出口の明かりが見える。車も人も誰も通らない。
「アカマツ」
ここから更に下の、国道伊勢神トンネルの東口に向かって道を下る。舗装された昔の国道はクネクネと曲がりながら東へと進む。回りは背の高いスギの林であるが、所々にアカマツが混ざっている。そのアカマツはスギに負けない背の高さで、しかも真っ直ぐに上へと伸びている。身近で見ているアカマツはもっと背が低く、幹が曲っている。こんなに背が高く真っ直ぐに伸びているのは見た事が無い。
「伊勢神トンネル東口」
左手にKDDIの無線中継塔があり、これを過ぎると間も無く国道に丁字路となって合流する。右手十数メートルの所にトンネルの出口がある。これからは再び国道153号線で車が多く行き交う。用心して歩かねば。先に国道から分かれ、ここで国道に戻るまでおよそ50分の道のりだった。
伊勢神峠から水別峠まで
「お店」
国道に戻って再び武節(稲武)に向かって歩き出す。しばらく歩いたところ、郡界橋バス停の手前右手にお店があった。構えたお店ではなく身近で取れた物を地べたに並べて売っている。お花や野菜、お芋など。栗が一袋500円とあったのは季節が感じられて嬉しかった。
「小田木へ向かう」
郡界橋を渡ることで道はUの字にカーブする。その後二、三度カーブを繰り返した後は、ほぼ北に向かって真っ直ぐに進む。道端には萩が咲いていたり、ススキの穂が風に揺れていたり、足元にはアザミや野菊も咲いて秋の風情である。しかしこの辺りには歩道が無い。だから季節を味わいながらのんびりと・・・とはいかない。こんな時は右側通行、対面通行が鉄則で、必ず向かってくる車のドライバーの目を見て歩く。目を見ていると、自分を認識してくれているかどうかが分かり、こちらもそれなりに対処出来るのだ。
「小田木から国道を外れる」
地図を見ると、この先国道は小田木中バス停を過ぎると右にカーブして川沿いを行き、橋を渡って再び川向こうを戻ってくるようになっている。この他に国道から左に分かれ、ほぼ直線的に進む道がある。どうもこちらが旧道らしい。そこで近くの民家の庭先に居たお年寄に聞いてみた。
話し好きの方で、『上のトンネルは日清・日露の頃に出来た。下のトンネルは伊勢湾台風の後。今の国道は自分が若い頃に作ったもので、当時は道幅が半分だった。それが国道になった。下を行く道が昔からの道で水別(みずわかれ)で国道と一緒になる。』と長々と説明してくれた。
カキノソレと言う所で国道から左に分かれ、下がって行く。
「水別峠を望む」
回りの田圃は稲がたわわに実り、秋の日に黄金色に輝いて見える。遥か彼方には水別峠が望め、揚水発電所の大きなタンクが山の上と下に有るのが見える。
「小田木のカヤの木」
回りは田圃、道の左手に大きな木が有り、根方に解説板が立っている。『小田木のカヤの木、稲武町指定天然記念物第4号、根回り3.83m、樹高15.0m、雌株。木の根元近くから太い枝が出ており、今まで枝打ちなど人手を入れた事が無い・・・。町内一の太さ』とあった。
「小田木の集落」
小さな川の橋を渡って集落に入る。集落とは言え街道沿いにはそんなに戸数は無く、散らばっている感じ。
「屋号の石碑」
左手の家の玄関先に石碑が立っていて、それには渡辺星(横一文字の上に小さな丸が三つ)の紋の下に吉田屋の屋号が刻まれている。墓石では無さそうだし、未だ新しい、一体何なんだろうか?
「お店」
こちらの家は元食品雑貨などのお店だったのか、そんな感じの家。二階に『みのや』の看板が有るが、これはお店の屋号なのか。
「間も無く峠」
古い道が右から来た国道に合流した。この辺りが水別(みずわかれ)でバス停がある。道路の上には『どんぐりの湯4.9q』『黒田ダム3.5q』『名古屋市野外学習センター2.1q』の案内標識がある。その先には揚水発電所の大きなタンクが見える。
「峠に描かれた中馬の絵」
国道の右手の壁面に大きな絵が描かれている。昔の中馬が行く姿で、中馬街道、水別峠とあった。
「峠の石仏群」
国道の左手には石仏群がある。並びの左から何処かのお寺の全景碑、中馬街道碑、賽神、石灯籠、馬頭観音2体で、賽神には由緒があり、それによると『賽神は、その名の如く外から襲い来る疫神悪霊などを村境や峠、または橋の袂で遮る神として祀られており、また生者と死者、人間界と幽冥界の境を司る神ともされていた。後世は性の神として旅行く人々にも信仰されたが、特に水別の賽神は腰痛にも霊験ありと言われ、藁火を焚いてお参りする風習があった。』と記されている。その前には『奉納藁焚鉢』と彫られた石が置かれている。
「奥矢作第一発電所」
小田木の信号交差点の右先角には奥矢作第一発電所がある。矢作川水系に建設された中部電力初の純揚水式発電所で、世界的にも珍しい二段式揚水発電所。昭和55年(1980)に運転を開始し、出力が31万5千kWである。巨大な円柱状のコンクリートのタワー(調圧水槽)が聳えている。高さ、深さ、それぞれ50m、直径18mでわが国最大級のしろものとか。後の赤い建物が発電棟で白と赤のコントラストが強烈である。
「豊田市稲武郷土資料館」
小田木の信号が水別峠の頂上でここから先は下りになる。少し下った先の右手に幾つかの施設が集まった所がある。その中の一つが『豊田市稲武郷土資料館』で、明治百年を記念して収集された民俗資料・歴史資料や旧稲武町民から寄贈された資料を合わせて平成15年4月、現在の場所にリニューアルオープンしたもの。入館料300円。稲武町が豊田市と合併したため看板が新しく書き換えられた。板が白々としているのが印象的。
「蓬莱泉吟醸工房」
白と黒、蔵造りのような建物が、蓬莱泉の酒蔵、関谷醸造の稲武蔵「吟醸工房」で2004年にオープンしたもの。酒造り体験や、酒のオーダーメードも出来る。
「モッキー」
森林資源に恵まれた稲武ならでは建物、中には伝統工芸や木工品が並び、木工製品やお土産などを売っている。これ等の施設の他に食堂もある。
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